トルコ旅行記#18 ~ デニズリの午後 ~

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昼過ぎのパムッカレ村は、早朝のそれとは打って変わって、観光地らしい活気があった。
とは言え、かすかに感じる空腹とは裏腹に、心引かれる店はなかった。
怪しげな牛丼の看板を掲げる店はあったが。
なので、デニズリのオトガルに戻ることにした。
デニズリのオトガルはショッピングモールに隣接しており、
朝見た限りではレストランも何軒かあった。

デニズリに戻り、遅めの昼食を済ませた。
飯を食ってしまうと、特にする事もない。
仕方なく、バスターミナル付近をブラブラする事にした。
バスの停留エリアを越えて反対側に渡った時、雨が落ちて来た。
日は差している。
小さな建物の軒下のベンチで雨宿りする事にした。
すぐ止むとかと思われたが、雨足は強くなって行くようだ。
軒下には自分の他にもう一人の青年が立っていた。

その建物は警備員の詰所だったらしく、2人の警備員が出てきた。
その内の一人が話かけて来た。
「日本人か?」とか、「トルコはどこを回った?」などと。
警備員は青年とも知り合いらしく、トルコ語で何か話していた。
そうかと思うと、またこっちに話しを振って来たりして。
警備員を中心とした奇妙な会話の『輪』と言うか、『軸』が出来てしまった。
『雨も降っているし』と席を立たない自分を、無意識的に弁解していると、
ちょっと待てといって、警備員は詰所に戻って行った。
少し気まずい空気が流れた。
すると青年が「座っても良い?」と横に座って来た。

警備員は、どこかの都市のパンフレットを持って来て、
「ここには行ったか?」と良いながら、それをくれた。
青年はそれを無視するかのように、
「学生?働いてる?」とか、「何の仕事してるの?」とか聞いて来て、
また自分の事も語り出した。
彼はここの大学生で、情報工学を学んでいるらしい。
そして、「将来は外国で働きたいんです」と。

彼からしてみれば、”外資系のIT企業の人”に見えたのだろうか。
興味津々なんやろな。
どの国が良いと思います?と聞かれたので、
「やっぱり、アメリカやろ~!」と答えて見た。
すると「自分はドイツが良いかなと思うんですけど」と。
そっか、自分の中で目標が定まってるんか。偉い。

確かにドイツにはトルコ系の移民が突出して多い。
先のワールドカップで活躍したドイツ代表のエジル選手はトルコ系3世だ。
彼の活躍をもって、”社会統合が成功した証拠”とドイツ政府がコメントを出さねばならないほど、それが社会問題にもなっているんやけど。

青年の思い通りになるかは分からない。
しかし、彼には、学生の頃の自分と比べて、何より勇気がある。
何とかなるさ。

雨は上がりかけていた。
そろそろ潮時と思い、また事実そうであったのだが、
「バスの時間だから」と席を立った。

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